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【日本著作権法】マージ理論・アイデア表現二分論・・・折り紙の折り方はアイデアか、折り紙作品の表現か?その両方か?

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 折り紙の折り方がアイデアであれば、発明として特許で独占可能な保護対象となり、特許で保護されない限りは、原則、何人も自由に実施可能ということになります。

 ここで発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものです(特許法第2条第1項)。

 この定義の中で、「アイデア」を言い換えている言葉が「技術的思想の創作」あるいは、技術的の語を除いた「思想の創作」の部分でしょう。折り紙を折るという動作若しくは折り紙が折れるという作用自体、「技術的」です。そして、折り紙の折り方は、明らかに「物」ではなく、無形の「思想」であり、それが、人から盗んだ盗作ではない限り「創作」としてこの定義に合致することになります。ちなみに、このアイデアである折り方を表現したものが「折り図」であり、折り方を実施したものが「折り紙作品」ということになります。

 したがって、折り紙の折り方は上記発明の定義にある他の条件を満たす限り、「発明(方法の発明)」として特許権の保護対象になります。まず、「自然法則を利用」したものであるかについては、紙は折れるという自然法則を利用しているので、この要件は満たします。「高度」であるかについては、これは実用新案との比較においての言葉であることから考えれば、「方法」である限りはほとんど満たすと考えてよいでしょう。したがって、折り方は特許法上の「発明」の定義を満たすことは明らかです。

 これにより他の特許要件、例えば、産業上の利用性、新規性、進歩性等を満たせば保護可能です。産業上の利用性を満たすためには、何らかの産業上の用途に適用可能で産業的な効果を奏するものであれば満たします。例えば、その折り方がある工業製品を非常に小さく折りたたむのに有用である場合には満たすことになります。新規性は、先行技術に全く同じ方法があるかで判断され、進歩性は例えば、既存技術の単なる組み合わせでないかで判断されます。公知の基本的な折り方の単なる組み合わせであれば進歩性は否定されるでしょう。ただ、非常に簡単な折り方の組わせでも、用途を限定等して、その用途に意外性があれば、新規性及び進歩性があると判断されるでしょう。

 このように特許要件を満たすことは十分に考えられるので、結論として「折り方」は方法発明として特許権取得可能ということなります。要するに、特許庁に出願して登録されれば、業として独占排他的に実施できることになり、逆に特許庁に出願しても拒絶されれば何人(誰でも)も実施可能ということになってしまいます。

 次に、折り方は、折り紙作品の表現の一つとして、著作物として著作権の保護対象となるかについて考えてみます。

 上述したように折り方は方法発明として特許権の保護対象となると共に、著作権法でいうところの折り紙作品の表現の仕方のうちの一つであるといわれれば、その通りです。しかし、このようにアイデアなのか表現方法なのかわからない場合には、いわゆるマージ理論若しくはアイデア実施自由の原則により著作権法による保護が否定されます。アイデアなのか表現方法なのかわからない場合というのは、その折り紙の折り方(折り紙を折る方法の発明)が仮に折り紙作品の表現方法の一つであったとしても、その折紙作品を表現するための他の折り方がないか折り方の数が限られている(有限の)場合に、結果として特許権の取得なしにその折り方である方法発明の実施を独占することになってしまう場合をいいます。この場合には、アイデアそのものの保護につながるような表現部分については、著作権法による保護が否定されるべきであるというわけです。

 それでは、特定の折り紙作家が創作したり折り紙作品を作成する方法が、実質的に有限の数に限られるか考えてみると、折り紙というものは、ちゃんと1つ1つの工程を正確に順番に折っていかなければ完成しませんから実質的に1つに限定されます。少なくとも有限(それもかなり少ない数)であることは確かです。したがって、その折り方はたとえ折り紙作品の表現の仕方であったとしても、マージ理論により、そのような表現は著作権法により保護されるべき表現ではないということになると思われます。

 折り方を、「伝承」と「非伝承」に分け、前者は昔からあるものだか自由に実施でき、後者は新規なものなので作者の許諾をとるべきという考え方がありますが、新規であるから保護されるべきだというのはアイデア保護的(特許的)な考え方で、実際にはさらに進歩性を有するものであるかが特許庁に審査されて初めて独占権が得られるものです。著作権法ではアイデアが新規でなくても表現が個性的・独創的(要するにまねしたものでないもの)であれば、その表現について著作物性が認められて保護されますが、あくまでも個性の現れた表現が保護されるに過ぎずその効力は折り方を普通に表現するというアイデア保護につながる部分に及ばないことに注意です。その場合、アイデアが「伝承」かという、新しいか古いかということは関係ありません。

 したがって、折り紙の折り方を新たに考案した折り紙作家は、もしそれを自分で独占したのであれば、特許出願をして特許を取るか、特許出願をしないであれば不用意に公開しないようにしなければなりません。このとき、一般に、工業的用途を限定しないで普通の折り紙の折り方として特許を取得するのは困難であると思われることに留意する必要があります。

 本などに掲載して、折り紙の折り方を公開することについては、出版により自分の創作として世間にアピールすることができ印税を受け取ることを期待できるということが言えますが、その折り方を独占することはできず、むしろ、その公開により誰もが自由に実施できることになりますので、注意が必要です。

 特許権を取らずに、例えば著作権法に基づき自分の考えた折り方なので人に講習をしてはならないという制限を課そうとする折り紙作家もいるるようですが、業として折り紙教室をされようとする業者等に作家という優位的な立場を利用して契約等でその権利範囲を超えてあまりにも不当な制限を課そうとする場合には、独占禁止法や不正競争防止法違反となる可能性も否定できないと思われますので、こちらの方も注意が必要だと思います(公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」参照)。

 なお、上記で論じた事項はあくまでも一専門家が一般的事項についての個人意見を述べたに過ぎないものであり、具体的案件についての法的アドバイスではありません。具体的案件の相談については最寄りの専門家にお尋ねになるようにお願いします。

 (T)

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